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KIXから世界のどこまでも。
〜関西国際空港から、いつか行きたい憧れの旅〜
Vol.6
Laos

「東南アジア、最後の秘境?」
ラオスのルアンパバーンへ

伊澤 慶一(Keiichi Izawa)
Edited by

伊澤 慶一(Keiichi Izawa)
2005年、海外旅行ガイドブック『地球の歩き方』を発行する出版社ダイヤモンド・ビッグ社に入社。編集部にてフランスやドイツ、香港、ロサンゼルス、ハワイなど世界中のガイドブックを制作。2017年に独立、クリエイティブ・ディレクターとして連載や動画ディレクション、トークイベントなど、幅広く旅行コンテンツを発信中。
Instagram @izawakeiichi
『ラオスにはいったい
何があるというんですか?』
これは、村上春樹さんの
紀行文集のタイトルである。
海外旅行に慣れていても、
この問いに明確に答えられる人は
それほど多くないだろう。
「東南アジア、最後の秘境?」ラオスのルアンパバーンへ
「東南アジア、最後の秘境?」ラオスのルアンパバーンへ
東南アジア、最後の秘境。

ラオスに行ったことのない僕が
ざっくり描くイメージもこの程度のもので、
悪く言えば「東南アジアの片田舎」と
決めつけている部分もあった。
しかし、世界一周経験者や、
バックパッカーの友人たちからは、
「ラオスは素晴らしい国だ」と聞く機会が
実は幾度となくあった。
特に、古都ルアンパバーンは
町のいたるところに寺院があり、
仏教の教えが隅々にまで届いた美しい町である、と。
「東南アジア、最後の秘境?」ラオスのルアンパバーンへ
「東南アジア、最後の秘境?」ラオスのルアンパバーンへ
普段自分はビーチリゾートや
ヨーロッパを旅することが多いので
あまりピンときていなかったが、
冒頭の村上春樹さんの問いかけに対して
答えられないもどかしさを感じていた。
ラオスにはなにがあるのか?
そもそも本当に秘境なのだろうか?
友人が勧めるルアンパバーンまで
関西国際空港から直行便はないが、
タイやベトナム経由で
それほど時間もかからず行けることがわかった。
結局、旅というのは自分の目で見ないと
納得できないものである。
僕は2つの疑問を抱え、
古都ルアンパバーンへ向かった。
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ルアンパバーンへ着いて驚かされたのは、
洗練されたカフェの多さだった。
フランスの植民地時代の面影を残す建物が
おしゃれな店舗に生まれ変わり、
しかも食事やコーヒーも見事に美味しいのだ。
欧米人から人気の観光地、とは聞いていたが、
本格的なベーカリーやビストロまで
存在するのは、完全に予想を裏切られた。
コロニアル調の装飾に囲まれたテラスで
キンと冷えたビアラオを飲みながら、
片田舎と決めつけていたことを
少し申し訳なく思った。
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「東南アジア、最後の秘境?」ラオスのルアンパバーンへ
滞在したホテルも、実に快適だった。
実はルアンパバーンには、
世界最高峰のリゾートのひとつ、
アマンリゾート「アマンタカ」がある。
創設者のゼッカ氏はこの町が大のお気に入りで
世界初、アマンのセカンドラインとなる
「アゼライ」というホテルも建ててしまった。
今回、さすがにアマンには泊まれなかったが、
代わりにその「アゼライ」に宿泊。
(現在は経営が変わり、「アヴァニ」という名前に)
町の中心部にも関わらず喧騒とは無縁で、
ホテルマンのサービスも一流!
なにより、ラオスの伝統建築をベースに、
シンプルモダンなデザインは
憧れていたアマンの世界観そのものだった。
これが1泊2万円以下で滞在できる
物価の安さもルアンパバーンの魅力だろう。
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旅好きな知り合いが教えてくれた
代表的な観光地へも、すべて足を運んだ。
郊外にある「クワンシーの滝」は、
ラオスの豊かな自然を象徴するスポットだった。
石灰華でできた段丘の地形に、
滝から落ちた水がエメラルド色に輝く。
クロアチアのプリトヴィツェ国立公園や
トルコのパムッカレにも負けない美しさである。
夕方には、町の中心部から
歩いて登れる「プーシーの丘」へ向かった。
ここはルアンパバーンを一望するだけでなく
夕日に染まるメコン川を眺められる
屈指のサンセットスポットでもある。
「東南アジア、最後の秘境?」ラオスのルアンパバーンへ
僕が滞在した4月のルアンパバーンは、
日中の最高気温が35度くらいまで上昇。
湿度もあるので、小高い丘を登るのは
それなりにしんどかったが、
丘の上から見たメコン川はまるで1枚の絵。
苦労は十分に報われる美しさだった。
「東南アジア、最後の秘境?」ラオスのルアンパバーンへ
そしてルアンパバーンで
一番楽しみにしていたのが早朝の托鉢だ。
朝4:30に起き、まだ真っ暗な
ルアンパバーンの町を行く。
托鉢とは、鉢を持った僧侶が
生活に必要な食糧や施しを受けて回る儀式のこと。
観光客はひざまずきながら、
ラオス人の主食であるもち米やお菓子を
少しずつ僧侶に渡していく。
「東南アジア、最後の秘境?」ラオスのルアンパバーンへ
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朝もやの中、袈裟を纏った僧侶の行進は
ラオスの町をオレンジ色に染めていった。
私語を挟む余地もないくらいの
荘厳な雰囲気が、1時間ほどは続いただろうか。
こうして今日もまた、
ルアンパバーンの1日が始まるのだった。
総じてラオスの旅は、
不便さやワイルドさを感じることはなく、
思い描く「秘境」のイメージとは違っていた。
しかしルアンパバーンは、
豊かで美しい自然や、
歴史を感じさせる建築物、
おいしい食事とコーヒー、
そして神秘的な宗教儀式に出合える
想像以上に素晴らしい旅先であった。
「東南アジア、最後の秘境?」ラオスのルアンパバーンへ
「東南アジア、最後の秘境?」ラオスのルアンパバーンへ
まだまだラオスの一部しか見ていないので
明確に答えられるわけではないけれど、
もし今の自分が、誰かに
「ラオスにはいったい
何があるというんですか?」と聞かれたら、
「旅人を惹きつける“すべて”が揃っています」
そう答えたいと思う。